妄想代理人

を、GEOで借りてきて全話見ました。ネタバレを含んでしまうので、嫌な人は見ないで下さい。

 

 

 

 

 

 

面白かったです。最初に起承、中頃で少年バットの話を進めつつも少し脱線、終盤で一気にまとめていくという流れでした。

物語の前提として形而上の存在の干渉をどの程度まで認めているかということが二転三転するのが若干見づからかったです。具体的には少年バットの正体についてでありまして、第一話ではまだなんとも言えないところ、第五話で少年バットも現実の存在なんだなと思いきや、第六話でそうでもないらしいことがわかり、終盤では何でもアリ。「アリ」と「ナシ」の閾値の設定が緩く、頭が混乱しました。

全体に関しては、序盤の謎の広げ方に比べて最終的な話のまとまりはスッキリとしていたため、面白かったですというくらいしか言うことがないです。「現代社会の歪み」だの「二種類の救済」だの、作品から明らかに読み取れるテーマについては多分もう誰かが書いてるんで書く気しません。

というわけで、細かいことについてダラダラ書きます。

 

  • 第五話での狐塚の証言

結局狐塚が襲ったのは蛭川と牛山だけなんですよね。それにも関わらず他の人物についても妄想の中で描写したのは視聴者のミスリード誘発を狙ってのことなんでしょうが、それにしたって偶然の一致にしてはあまりにもやりすぎのような気がします。

  • 老婆の孫

第六話では老婆の孫が妙子と思わせるようなミスリードが仕込まれていましたが、このミスリード、要りますかね?老婆の孫が妙子であろうとなかろうとどっちでもいいように思います。

  • 月子の狂言疑惑

第一話ではなく、第五話で月子が嘘をついているのではないかと疑われるシーンの不自然さについてです。この時点で既に狐塚は逮捕されていますから、馬庭と猪狩は月子が描いたイラストと狐塚の外見一致を確認していると考えるのが妥当です。結局月子が見たのは狐塚では無かったとはいえ、少年バットと外見はよく似ているわけですから、その整合を捨てて狂言を疑うのはちょっとおかしな気がしました。

  • 第八話の解釈

圧倒的に浮いている第八話。幽霊という設定が導入されているのはこの話だけです、少女セクト原作第六話みたいなもんですね。本編全体の中での役割は少年バットの凶行、あるいは妄想が拡散する様子を描写することだと思うんですが、主人公格の三人が襲われるわけでもなし。一般的にも気になる話のようで、Googleに「妄想代理人」と打ち込むと、全話の中で唯一サブタイトル(「明るい家族計画」)を含む変換予測が出てきます。

とりあえず三人が死んだタイミングについてです。冬蜂が終盤に気付く影の有無について最初から注意深く観察してみると、まず開始直後には確かに三人に影が有りますが、冬蜂が影がなくなっていることに気付くまで(恐らく意図的に)影が描写されません。練炭自殺の前後で明らかに時間軸がおかしなことになっている(練炭自殺を始めたときは夜だったのに、ビルが取り壊される時は完全に明るくなっている)という点から、練炭自殺が成功していたと考えるのが妥当だと思います。三人が物理的干渉をしているし旅館にも泊まっているのが怪しいところですが、幽霊の定義について突っ込んでいるアニメではないのでなんとも言えません(ゼブラが幽霊を見たことについても彼が霊感が高かったからとかたまたまとか考えようはありますし、一粒余りっぱなしだった薬についても同様です)。ラスト、写真に写りこむところでは明らかに他人からは見えなくなっていたので、彼らが幽霊であることを受け入れるまでは他人にも干渉出来るんでしょうか。そもそも冬蜂以外は死に気付いていたのかどうか、どうとも言えないことだらけです。

別の話として、この話に出てきた少年バットは本物か偽者かも気になるところです。本物の少年バットは壁抜けが出来ることは第六話で既に示されてますから、仮に本物であればわざわざ階段を転げ落ちなくてももっとスマートに退散が出来たはずです。かといってこの話で少年バットが偽者である必要は特に無いですし、うーん。

  • 「猪狩の町」と月子

猪狩の妄想である「町」に月子が辿り着き、マロミ曰く月子にとっても良い居場所として描写されていたのは何故なんでしょうか。少なくとも、年代的に月子の理想郷ではないはずですが、単に妄想の世界として居心地がいいだけかもしれません。

  • マロミが「黒い塊」を止めるところ

ポジティブな意味では一番好きなシーンです。月子の不注意で自分が死んだことを知ってもなお(あるいは最初から知っていて)、それでもマロミは月子を守るんです。ベタながらいいシーンです。

  • 白髪の老人

彼の役割があまりわかりませんでした。第一話から意味有りげにチョークでなんか書いていた割には、最終話で提示された真相は月子の中で完結していて彼の干渉する余地はありません。単に「妄想に対して何かしらの心得のあるひと」というだけで……思い返してみると、物語中で接触があったのは主に馬庭だけでした。終盤で馬庭にアドバイスを行うため、そして妄想の世界から戻ってこられなくなった馬庭の老人化で事態の繰り返しを暗示するためということでいいんでしょうか。

  • 老婆

インパクトの割りにあんまり出番無かったですね。

 

DVD最終巻の特典「妄想ラジオ」、おっさん3人がウダウダ喋ってる上にやたら長くて聞くのがダルいんですけど、「これを聞かずに妄想代理人は語れない」とか銘打ってあるので仕方なく頑張って聞きました。というか、聞きながら書いてます。

今、最終話最後の馬庭について「ループになっている」と明言しました。製作者がそう言っているならそうなんでしょう。

妄想代理人」はループものだったということで、それでは。