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僕は鉄緑会に6年、河合塾に1年通ったわけですが、両者で受験問題や解法に対するスタンスの違いがあるのは面白いと思っていました。

講師単位での差もあるでしょうし、河合塾で通ったのは浪人生を主な対象とした大学受験科ですから現役生を指導するよりは講師の側にも余裕があったということで、一概には言えないにしても、テキストの序文などを読んでも違いは如実に表れています。

 

一流と言われる大学ほど、数学的に意味のある興味深い題材を元にした問題が多いようです。このテキストを編集するにあたっても、学力をつけると同時に、問題自体をも楽しんでもらえることを重視しました。たとえば、演習6は円周率に対するWallis(ウォリス)の公式を導く問題、演習10は3次方程式のLagrange(ラグランジュ)による解法、演習29はPell(ペル)方程式として知られている不定方程式に関する問題、といった具合です。このように、関連する一般論などがある問題の場合は、単に問題の解答だけでなく、付随した話や背景なども知っておくと、その問題に対する理解が増して喜ばしいと言えましょう。

河合塾「ハイパー東大理類数学演習テキスト」より

 

大学以降の専門的な数学を垣間見れば大学の入試問題が解きやすくなるという観点から、大学以降の数学をかじる塾や予備校が増えている。しかし、(中略)多くの入試問題集に掲載されている「大学で学ぶ数学の言葉で言うと」「大学では有名な問題である」などの一言は、受験生諸君にとっては「そのようなことを言われても」といった印象を与えるだけで、問題を解く発想の獲得に有用ではない。

鉄緑会「東大数学問題集」より

 

河合塾は大学以降の知識も織り交ぜた解説を行おうとしている一方、鉄緑会は点数主義で点数に直結しない知識は必要無し、といった具合、僕も丁度この2文に象徴されるような違いを感じていたわけです。

河合塾では「正確な式さえ立っていれば概ね満点が貰えるのでそれで宜しい」と語る講師が多かった一方、鉄緑会は点数に直結する計算ミスに対する注意喚起が極めて苛烈で(河合塾が計算ミスに寛容という話ではないですが)絶対に単純計算を間違えないよう多くの講師から厳命されていました。

別にどっちを勧めるとか勧めないというのではないのですが(個人的には鉄緑会のストイックな姿勢の方が好きです)、受験関係の資料を整理しているついでにテキストを開いて面白かったので、それだけ。