魔法少女育成計画

女性主人公シリーズ第三弾です。

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)

大人気ソーシャルゲーム魔法少女育成計画』は、数万人に一人の割合で本物の魔法少女を作り出す奇跡のゲームだった。幸運にも魔法の力を得て、充実した日々を送る少女たち。しかしある日、運営から「増えすぎた魔法少女を半分に減らす」という一方的な通告が届き、十六人の魔法少女による苛烈で無慈悲なサバイバルレースが幕を開けた……。第2回「このラノ」大賞・栗山千明賞受賞作家の遠藤浅蜊が贈る、マジカルサスペンスバトル!

 

群像劇形式の作品で、女性主人公ものというよりは女性キャラクターオンリーのライトノベルです。表紙は主人公格のキャラクターの一人「スノーホワイト」です。

魔法少女と鬱・グロテスク要素が結合した起源はまどかマギカに遡るのか、いやアンチテーゼとしては邪道魔法少女三部作にまで遡っておきたい小麦ちゃんは可愛いとかそのあたりの議論はとりあえず省略することにして、兎にも角にも「魔法少女の殺し合い」がテーマのライトノベルです。

いわゆる能力バトルものとしては極めてオーソドックスな設定を採用しており、一人あたり異なった能力を一つずつ割り当てられています。特に面白いのは口絵部分で全ての魔法少女の名前と能力が明かされているところです。各キャラクターの能力が内容に直結すると言っても過言ではない能力バトルもので最初にネタばらしとはなんたる暴挙、しかしそれでも、それだからこそ面白いストーリー展開には脱帽する限りです。

登場キャラクター数は多く(16人)、かなりサクサクと死んでいきます。この作品に限ったことではないですが、意外なキャラクターの死亡シーンを読んで思うことには、やはり群像劇形式とバトルロワイヤルものの相性は極めて良いです。主人公が明確に設定されている作品では基本的に主人公が勝つ、よしんば負けても死なないあるいは生き返るという宿命から逃れられず、戦いの内容そのものより如何に主人公が勝つかという過程・ストーリー性にテーマを割り振らねばならないという欠点があります。その点、群像劇形式のバトルロワイヤルでは(少なくとも死ぬまでは)描写のウェイトが各キャラクターに平等に割り振られているため、誰が負けるのか誰が死ぬのかがわからなくなり、バトルの内容を面白く読むことが出来ます。

女性主人公性について少し触れておきますと、ライトノベルにしては珍しく、「女性キャラクターが美少女では無い」ということをわりとはっきりと描写している作品です。魔法少女ものですから、普通の人間の少女たちが魔法少女に変身するという基礎設定を持っているのですが、美少女化するのはあくまで魔法少女化に際してで、逆に言えば普通状態での少女はやはり普通なのです。この「キャラクターの美少女性を否定する」という現象は女性主人公ものでは(少なくとも男性主人公ものよりは)高い頻度で起こってくる現象で、女性主人公ものでは女性キャラクターがヒロイン・客体ではなく主人公・主体という属性を持つことで、ヒロインに課せられた神格化のフィルターを逃れるようになるからではなかろうかと思います。

少し一般論に話が脱線しましたが、能力バトルものとして完成度が高い作品でした。数多い登場キャラクターそれぞれの個性がよく描写されていますし、能力や制約を利用した裏切り騙し討ちなんでもアリの頭脳戦はアツかったです。オススメ。

魔法少女育成計画 restart (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔法少女育成計画 restart (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔法少女育成計画 restart (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔法少女育成計画 restart (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)

続編「魔法少女育成計画 restart」が前後編で出ています。こちらも面白かったです。

魔法少女育成計画 episodes (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔法少女育成計画 episodes (このライトノベルがすごい! 文庫)

近いうちに外伝集のようなものも出るようです。楽しみですね。